映画「日本以外全部沈没」

先日、映画「日本以外全部沈没」を観に出かけた。小松左京氏原作で、ことし映画もリメイクされた「日本沈没」。そのパロディの短編小説「日本以外全部沈没」が原作である。原作者の筒井康隆氏も、映画に出演している。また、最近CSでも放送されているが、TBSドラマ「日本沈没」に主演した村野武範氏が総理大臣役で、1973年の映画「日本沈没」の主演である藤岡弘、氏が防衛庁長官役で共演しているところもすごい。

この映画は、タイトル通り、日本以外の国々がすべて沈んでしまい、多くの外国人難民にあふれる日本がどうなるかを描いている。最初にアメリカ大陸が沈み、次に中国大陸、ユーラシア大陸全体が次々に沈み、やがて日本列島以外が沈む。どうして世界中の大陸が沈み日本だけが残ったのか、そのメカニズムはどうなのか、この映画ではそれほど重要ではない。温暖化で北極と南極の氷が溶けて海水面が上昇したため、地殻に海水が浸透し緩くなってプレートが急速に沈み込み、連鎖的に大陸が沈んでいった。日本列島はたまたま中国大陸の上に乗ったため、逆に地盤が上昇して沈まずに済んだということのようである。日本列島以外でも、チベットの方にも陸地が残っているような設定だった。原作を読んでいる人は分かると思うが、結局最後は日本列島も転覆してしまう。

中国大陸が沈んだことを、自転車に乗ったラーメンの出前持ちが、よろけて川にラーメンを落としてしまうことで表現している。フランスなどヨーロッパが沈んだことを、フランスパンを川に落としてしまうことで表現している。言われてみないと気付かないにくい表現手法だが、そのロケをした川が目黒川であることに気付くのはもっと難しいことだった。

各国の元首脳たちが、日本の総理大臣に頭が上がらない状態になっている。アメリカは、在日米軍基地を日本に返還することで難民を受け入れてもらうことになっている。ロシアはすんなり北方領土は日本の領土と認めている。中国と韓国は、歴史認識の問題は大陸と共に沈んだ、水に流したというしまつ。二人で神社に御参りにいくほどだ。食糧の輸入ができなくなり物価は高騰するが、反対に、捕鯨に反対する人が誰もいなくなり、食卓に鯨鍋が並ぶようになる。外国の為替も暴落し、ドルが5銭、元が数厘、ユーロがマイナス4円と説明していたと思う。そのため、お金持ちの外国人も、日本ではたちまち路上生活者となってしまう。外国人難民にあふれ人口が5倍になった日本。最初の頃は、ハリウッド俳優も日本のテレビ界で活躍するが、外国人だらけの日常生活、せめてテレビでは外国人を見なくてすむようにと視聴者の意見が強まり、彼らの出番は減っていく。人気の特撮ドラマは、怪獣やヒーローに次々と押しつぶされる外国人が描かれている。天気予報ならぬ「外人予報」なる番組もでてくる。外国人犯罪を制圧するため、超法規的に「GAT」(=GAIJIN ATTACK TEAM)が組織される。ダンボールハウスを火炎放射器で焼いたり、犯罪を犯した外国人は即国外退去処分にする。また、密告者にはおにぎりを与えるということから、「ギブミーオニギリ」と言ってGAT隊員にむらがる外国人。こうして罪の無い外国人たちが日本の外に追いやられる。生活にみじめな思いを強いられる外国人。しかし、成功している外国人もいた。デーブ・スペクター氏が演じた「日本語学校」の校長。日本語が義務付けられたため、かつての「駅前留学」は衰退し、かわりに台頭してきた。「私は校長ですが、好調です」と、日本流の駄洒落で決めてくれた。この映画では何度か「うまい棒」が出てくるが、なんと値段が10万円もする設定だ。外国人のあこがれの食品だ。国連の存在も無視する日本に対し、テロを企てる者が現れる。「北の国」だ。各国首脳を人質にとり、国会議事堂にいる防衛庁長官も拘束しようとする。しかし、こうしたことを想定していた長官は爆弾を身にまとっていた。ためらうことなくスイッチを押し、議事堂ごと爆破させてしまう。その直後、地震が襲う。どこからともなく三輪車でやってきた田所博士が人類の終わりを告げる。停電になり一本のろうそくの灯火も首脳達ら全員で囲む。世界に平和が訪れた瞬間だ。そして大地震が日本列島を襲い、沈んでしまう。そして白い「終」の文字がかわりに浮かんでくる。

物語とはあまり関係ないが、イジリー岡田氏が若手議員役で出演している。結婚したんですけど、などと総理につぶやいている。まるで、杉村太蔵議員を思わせる。筒井康隆氏は、ハリウッド俳優に、百円やるから何か芸をやれと言う役。アーノルド・シュワルツェネッガーのそっくりさんには10円、ブルース・ウイルスのそっくりさんには5円しかやらない。

劇中は「外国人」のことを「外人」と呼称している。そのほか、外国の方々に不愉快に思いをさせるような表現もあり、また、日本人のいやらしい部分の表現もある。問題作と言えば問題作で、そもそもこの映画の狙いはそこにある。なので、少なくても地上波のテレビで放送されることはまずないと思う。

この記事へのトラックバック